アドビ本社の ADC に、アドビの戦略転換とそれに伴う Flash プラットフォームへの影響について、記事が公開されました。 (Adobe's strategic transformation and the Flash Platform)
それによると、まず、アドビが抜本的な変革の最中であること、すなわち、ソフトウェアの入った箱を販売する従来のビジネスから、
- クラウドベースのソリューション
- タッチ操作の可能なデバイスの世界
- どこにいてもソーシャルネットワークにつながる世界
に変わりつつあることが述べられています。
これらがどの位抜本的な変革なのかは意見のあるところでしょうが、アドビとしては今が革新の時期だと考えているようです。
それに伴い、アドビは 2 つの領域に注力するとのことです。
- デジタルメディア:
コンテンツの制作と収益化を実現、CS 製品やサービス、タッチアプリ、プラットフォーム技術、クリエイティブクラウドが含まれる - デジタルマーケティング:
様々なデバイスやメディア上でのデジタル体験の管理、計測、最適化を行う。Site Catalyst や Day が含まれる
これらはどちらも急速に発展しつつある領域であるため、アドビにもアドビのコミュニティにも大きな機会がある、としています。最近の様々な動きや発表は、これらの領域に注力するためのものだそうです。
(要はもっと広い目で見て欲しいということのようです)
Flash や Flex に関する今後の方向性についてもまとめられていましたので、以下、そのまとめです。
デスクトップ版 Flash Player
デスクトップ版 Flash Player に対しては、引き続き注力する、特に、ゲームやビデオを中心としたコンテンツ再生に有効な機能を中心に機能強化を続ける、とされています。
現在開発中の機能の例としては、
- マウスのロック機能
- ActionScript の並列処理
- Telemetry / Monocle
- 音声 API 改善、特に音声遅延への対応
- ActionScript 3 に新しいデータタイプの追加
が挙げられていました。
また、より長期的な活動として、全体的なアーキテクチャ変更にも着手しているそうです。
モバイル版 Flash Player
ここは、前回の発表の繰り返しでした。
Android & BlackBerry 向けの Flash Playe 11.1 を最後に、新しい構成 (OS バージョンやブラウザなど) に対応する デバイス向けの Flash Player の開発は行わない、バグ修正やセキュリティ対応は行う、だそうです。
モバイル版 Adobe AIR
デバイス向けの AIR については、引き続き注力を続ける。これによりデザイナ/開発者は iOS, Android, BlacBerry 等で動作する Flash ベースのアプリケーションを開発できる、だそうです
デスクトップ版 Adobe AIR
デスクトップ向けの AIR については、引き続き注力を続ける。デスクトップ版の AIR の次のバージョンも精力的に開発中。
AIR 3.0 から追加されたキャプティブランタイムは、別途 AIR ランタイムをインストールさせること無く、AIR アプリケーションを配布できる。これにより、エンドユーザより簡単に AIR アプリを使用できるため、アドビはこの機能の利用を推奨する。
Flex
既に発表したように、Flex SDK は Apache Software Foundation に提供され、提供するものとして、Flex SDK 以外には、
- 未公開のものも含めた完全な Spark コンポーネント (ViewStack, Accordion, DateField, DateChooser, 拡張された DataGrid を含む)
- サーバ側の Java リモーティング & メッセージング技術である BlazeDS
- 次世代の MXML & ActionScript コンパイラで現在開発中の Falcon (2012 年に完成後に提供予定)
- 実験的なクロスコンパイラで MXML & ActionScript から HTML & JavaScript に変換する Falcon JS
- アドビが Flex の開発用に使用してきた品質確認用のテストツール
を提供するそうです。
また専任のチームが Apache プロジェクト担当になることも触れられています。
以下は、微妙な修正がありました。
"アドビは Flex と LiveCycle アプリケーションのサポートを継続します。また、将来のバージョンの SDK で開発した デスクトップブラウザ内の Flash Player 上や iOS, Android, BlackBerry Tablet OS 上で動作する AIR モバイルアプリについても同様です。"
Flash Professional
Flash Professional も注力する製品だそうです。次のバージョンで実現予定の主な機能として、
- Starling や HTML5 の Canvas から利用できるスプライトシートの書き出し
- ANE を利用したモバイル向け AIR アプリのパッケージ機能
- モバイル向け AIR アプリケーションのプロトタイプとシミュレーション
が挙げられていました。
更に、これらの機能追加の他にも、製品のコードの全体的な見直しと書き直しを行っているそうです。これは、次期バージョンの開発と平行して行われている長期プロジェクトだそうです。
Adobe AIR for TV
AIR としてパッケージされた Flash ベースのアプリケーションを、TV または TV をディスプレイとして使用するデバイスに搭載することに力を入れているそうです。この件については MAX でもいくつかのセッションで話されていました。
Adobe Connect
Connect については、マーケットやソリューションを絞った上で、引き続き注力するそうです。
Flashはこれから高性能デバイスとして突き抜けてほしいですね。
ゲーム分野でいえばFLASHは本当に画像の描画処理等を家庭用ゲーム並にしてほしいなと個人的な感想。
Starlingをもっと使いやすくするか、表示オブジェクトによる描画性能を向上してほしいところです。
Flashの敷居の低さを保ちつつ、ゲーム機なみの高性能ゲームが開発できる環境作りがこれからのFlashのキーになりそうですね。
他にはAdobe AIR for TVが面白そう。
タッチデバイスと組み合わせてインタラクティブTVとか(PCで似たようなのはありますが)色々可能性が広がりそうです。
これをやるんだったら、FlashとAfterEffectsの連携とか、動画ファイルのキューポイント制御等をもっと手軽にやれるようにできればAir For TVは面白くなりそうですね。
これからの指針を見ると中々に心動かされるものがあります
しかししかし。
それでもモバイル版Flash Playerは絶対必要だと思います。