AS3 で動的言語のススメ

AS3 は元来動的言語ですので、改めて勧めるというのも変な感じですが、今回はさらっと読んでいただければと思います。

AS2 と AS3 のコンパイル時の型チェック

まずは何も属性もメソッドも定義されていないクラスを定義してみます。

class Foo { }
 

次に、上のクラスを使って以下のような記述をします。2 行目で存在しないメソッドを呼び出しています。

var foo:Foo = new Foo();
foo.nonExistingMethod();  // 存在しないメソッドの呼び出し
 

このコードをコンパイルしたとき、AS2 ではコンパイル時にエラーが出力されます。一方 AS3 ではコンパイルエラーにはなりません。この結果から、AS3 のほうがコンパイル時のチェックがゆるい言語だということが分かります。

そんな結果にはならなかった!という人は strict というオプションを付けてコンパイルをしているからです。

Flash を使っている場合はパブリッシュ設定パネルの AS3 設定パネルに、Flex Builder であればプロジェクトのプロパティパネルのコンパイラの設定パネルを開いてみると、”strict” あるいは ”厳密な型” という言葉が含まれれるラベルの付いたチェックボックスがあると思います。これを見つけたら選択を解除しましょう。この状態が本来の AS3 コンパイラの動作です。

AS2 における型

Flash 5 で ActionScript 1 が導入されて以来、Flash コンテンツへのスクリプトの利用範囲もどんどん広がって、Flash MX の頃にはコードを大量に記述することも多くなっていました。そんな中、ActionScript でも OOP ができるようにと導入されたのが ActionScript 2 です。これで class キーワードも使えるようになりました。

ところで、AS2 は AS1 上のレイヤーとして実装されました。例えば AS2 は AS1 の上に OOP をサポートするためのフレームワークをのっけた環境であると考えてもよいでしょう。

このとき、AS1 の実行環境は型をサポートしていないので、同じ環境で実行される AS2 にも実行時の型サポートが無いという状況が起きています。つまり、AS2 における型の使用は、オーサリング時の ”生産性向上のベストプラクティス” としての位置づけ以上ではないわけです。実際 OOP をまじめに追求するほど AS2 のアプリケーションは遅くなる傾向を持っています。

それと、AS1 / 2 が実行環境を共有していることで、もうひとつの問題があります。それは実行環境がランタイムエラーを通知しないことです。

AS1 の始めの頃はごく補助的な使われ方を主に想定していたためエラー通知機能が省かれたのだと思いますが、AS2 ではこれは無視できない問題です。例えば、コンテンツの再生時にスクリプトの実行に失敗していても、どこかでエラーが起きているようだと気づいたところで状況を知る手段がないため、問題の箇所を特定することはかなり困難です。

そこで、AS2 のコンパイラは静的言語的な動作をするように設計されました。この記事の最初の例のように、存在しないメソッド呼び出しをコンパイル時にエラーとみなすのはそのためです。

一方、AS3 はデバッグプレーヤがランタイムエラーを報告します。この機能があるため、(ようやく) 動的言語らしく、様々なコンパイル時のチェックをオプションにすることができたのです。

動的言語と静的言語

ちょと聞きかじったところによると、静的言語がコンパイル時に決定できることはできる限り決めてしまえという考え方の言語であるのに対し、動的言語は実行時まで遅らせられることはできるだけ遅らせてみようという言語だということで、一般的には、静的言語はパフォーマンスや大規模開発における生産性に優れていて、動的言語は柔軟性や記述の簡潔さで勝っていると言われているようです。

とはいえ、動的言語と静的言語の間に厳密な線を引くのは難しく、この説明も、動的言語的な性質と静的言語的な性質の記述と理解したほうが適切かもしれません。例えば AS3 のコンパイラは strict オプションを付けることで静的言語的な振舞いを取るようになります。

AS3 も動的言語のはしくれですから、変数宣言 / 型注釈 / セミコロン等なしでプログラムの記述ができます。

foo = ["one", "two", "three"]
for each (i in foo)
  trace(i)
 

for each 構文も AS2 にはなかったですね。

おわりに

AS3 は動的言語なりに柔軟性の高い言語です。問題は Flash CS3 のビジュアルオーサリング環境との統合がまだ最初のステップであること。これは CS4 に向けての大きな課題だと思いますし、是非今後フィードバックをお願いします。

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